- イオン結晶の結晶格子
- イオン半径比と結晶構造
イオン結晶
イオン結晶には様々な結晶格子があります。
例えば、陽イオンと陰イオンの数の比が1:1であるイオン結晶の結晶格子には①NaCl型 ②CsCl型 ③ZnS型の3種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
塩化ナトリウムNaCl型
【概要】
上図のように、各頂点と辺の中央に陽イオンと陰イオンが交互に配置された構造を塩化ナトリウムNaCl型構造といいます。片方のイオンに着目すると、面心立方格子と同様の構造です。
【イオンの数】
・Na⁺:中心にあるが1個分、各辺の中心にあるイオンが\(\frac{1}{4}\)個分なのでNa⁺の数は、1+12×\(\frac{1}{4}\)=4個になります。
・Cl⁻:各頂点のイオンが\(\frac{1}{8}\)個分、各面の中心のイオンが\(\frac{1}{2}\)個分なのでCl⁻の数は、8×\(\frac{1}{8}\)+6×\(\frac{1}{2}\)=4個になります。
【配位数】
・Na⁺:真ん中のCl⁻に着目すると周りにNa⁺が6つあるため配位数は6になります。
・Cl-:Na⁺と同様に考えると、配位数は6となります。
塩化セシウムCsCl型構造
【概要】
上図にように中心に一方のイオン1個分が配置し、各頂点にもう一方のイオンが配置する構造を塩化セシウムCsCl型構造といいます。
【イオンの数】
・Cs⁻:中心の原子が1個分なので、Cs⁻は1個になります。
・Cl⁻:各頂点の原子が\(\frac{1}{8}\)個分なので、Cl-は8×\(\frac{1}{8}\)=1個になります。
【配位数】
・Cs⁺:Cs⁺の周りにCl⁻が8つあるため配位数は8になります。
・Cl⁻:1つのCl-がイオン1個分になるよう計8つの単位格子を並べると、Cl-の周りにCs⁺が8つあるため配位数は8になります。
硫化亜鉛ZnS型
【概要】
上図のように一方のイオンが面心立方格子の配列をとり、もう一方のイオンが単位格子を8等分した小立方体の中心を1つおきに占めている構造を硫化亜鉛ZnS型構造といいます。
【イオンの数】
・Zn²⁺:面心立方格子と同じ配置を取っているため、Zn²⁺の数は8×\(\frac{1}{8}\)+6×\(\frac{1}{2}\)=4個となります。
・S²⁻:4つの小立方体にイオン1個分のS²⁻があるため、S²⁻の数は4個となります。
【配位数】
・Zn²⁺:単位格子を2つ並べると、Zn²⁺のまわりにS²⁻が4つあるため配位数は4となります。
・S²⁻:S²⁻の周りにZn²⁺が4つあるため、配位数は4となります。
その他のイオン結晶
陽イオンと陰イオンの数の比が変われば、様々なイオン結晶の結晶格子が見られます。
以下は教科書にも載っているCaF₂型(陽イオン:陰イオン=1:2)とReO₃型(陽イオン:陰イオン=1:3)の結晶格子です。
イオン結晶の構造とイオン半径の比
イオン結晶の構造は、陽イオンと陰イオンの大きさの比で決まります。
陰イオンの大きさを固定し、陽イオンの大きさを変えてみると次の3パターンに分けることができます。
一般に、次の条件を満たすとイオン結晶は安定します。
- 配位数が大きい(異符号のイオンの数が多い)
- 同符号のイオンが接しない(距離がある)
陰イオンに対して陽イオンが小さすぎると、陰イオン同士が接触します。
そのため、陰イオン同士が接触しない配位数が小さい構造を取るようになります。
陽イオン:陰イオン=1:1の場合、配位数が「ZnS型<NaCl型<CsCl型」です。
つまり、陰イオンに対して陽イオンが小さいほどZnS型、陽イオンが大きいほどCsCl型になるということです。
(詳しくは発展の「イオン結晶の限界半径比」で解説します。)