化学反応式と物質量(作り方・イオン反応式・係数・量的関係など)

この記事で学ぶこと
  • 化学反応式とその作り方
  • イオン反応式
  • 化学反応式を量的関係

化学反応式

化学反応とは

物質の三態と熱運動化学反応について軽く説明しましたが、ここでより詳しく解説します。

化学反応とは、原子の組み換えによってある物質が他の物質に変化することです。
例えば、鉄が酸化する(さびる)反応は次のことが原子レベルで起こっています。

化学反応は原子の組み換えなので原子が増えたり、他の種類の原子が現れたりすることはありません。
原則として、化学反応の前後で原子の種類・数は変わりません。


化学反応式とそのルール

化学では、化学反応式(反応式)を使って物質の変化・生成を表します。

キーワード

化学反応式:化学式を使って、化学反応を表した式。反応する物質を反応物、反応してできた物質を生成物という。

化学反応式には、いくつかのルールがあります。
以下のルールを覚えておけば、簡単に化学反応式を作ることが出来ます。

化学反応式のルール
  1. 化学反応式の前後では、原子の種類と数が同じになる
  2. 反応物を左に、生成物を右に書いて右矢印「→」で結ぶ
  3. 係数(化学式の前につける数字)は、最も簡単な整数比にする
  4. 反応の前後で変化しない触媒や溶媒などは、反応式中に書かない

これらのルールを踏まえて、実際に化学反応式を作っていきましょう。


化学反応式の作り方

水素H₂と酸素O₂が反応して水H₂Oが生成する化学反応」を化学反応式を使って表してみましょう。

ステップ1:反応物を左に、生成物を右に書いて右矢印「→」で結ぶ(ルール2)

反応物は水素H₂と酸素O₂、生成物は水H₂Oなので

H₂ + O₂ → H₂O

ステップ2:原子の数を係数をつけて揃える(ルール1)

ステップ1で作った反応式を見てみると
左は水素原子2つと酸素原子2つ、右は水素原子2つと酸素原子1つになっているので、左の酸素O₂に係数\(\frac{1}{2}\)をつけて揃えましょう。

H₂ + \(\frac{1}{2}\)O₂ → H₂O

ステップ3:係数を最も簡単な整数比にする(ルール3)

ステップ2で作った反応式の両辺に2をかければ、化学反応式の完成です。

2H₂ + O₂ → 2H₂O

※ステップ2の段階で、酸素を揃える(H₂Oを2倍)→水素を揃える(H₂を2倍)とやっても構いません。(むしろ分数にならないため楽です。)

以上が、基本的な化学反応式の作り方です。
練習問題を用意したので、反応式を作ることに慣れていきましょう。


化学反応式を作る練習問題

解答は、上述のステップ1~3の順に作っています。

典型問題

問:アルミニウムと酸素が反応して酸化アルミニウムができる反応の化学反応式を書け


解答:タップで表示

ステップ1:Al + O₂ → Al₂O₃
ステップ2
・2Al + O₂ → Al₂O₃
(アルミニウム原子を揃える)
・2Al + \(\frac{3}{2}\)O₂ → Al₂O₃
(酸素原子を揃える)
ステップ34Al + 3O₂ → 2Al₂O₃
(両辺×2)

完全燃焼

問:メタンCH₄を完全燃焼させたときの化学反応式を書け。


解答:タップで表示

完全燃焼とは、酸素を十分に供給して燃やすことです。問題文に酸素と書かれていなくても、”完全燃焼”と書かれていたら「酸素と反応したんだな」と思えるようにしましょう。

ほとんどの場合、完全燃焼で生じる物質は二酸化炭素と水です。
よって、化学反応式は次のようになります。

ステップ1:CH₄ + O₂ → CO₂ + H₂O
ステップ2

CH₄ + O₂ → CO₂ + 2H₂O (水素原子を揃える)
CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O (酸素原子を揃える)

触媒を使った反応

問:過酸化水素水H₂O₂を過酸化マンガン(Ⅳ)を触媒にして、水と酸素に分解したときの化学反応式を書け


解答:タップで表示

ルール4から、触媒(化学反応を促進させるが、変化しないもの)は化学反応式に書く必要がありません。よって、化学反応式は次のようになります。

ステップ1:H₂O₂ → H₂O + O₂
ステップ2:H₂O₂ → H₂O + \(\frac{1}{2}\)O₂
(酸素原子を揃える)
ステップ32H₂O₂ → 2H₂O + O₂
(両辺×2)


イオンを含む反応式

先ほどの水H₂Oが生成する反応は、原子どうしが共有結合をするため起こるものです。
ではイオンどうしが結合する場合(イオン結合、塩化水素などの水素イオンと陰イオンとの結合)の書き方について説明します。

銀イオンAg⁺と塩化物イオンCl⁻から、塩化銀AgClが生成する反応を書くと次のようになります。

Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl

このようにイオンを含む化学反応式をイオン反応式といいます。

イオン反応式の大事なルールは、左右で電荷の総和が等しくなることです。
他は化学反応式のルールと同じです。

また、後に学習する「酸化還元」でよく出る下式もイオン反応式になります。

Cu + 2Ag⁺ → Cu²⁺ + 2Ag


練習問題

問:硝酸バリウムBa(NO₃)₂に硫酸ナトリウムNa₂SO₄を加えると、硫酸バリウムBaSO₄が沈殿した。このとき起こった反応をイオン反応式で書け。


解答:タップで表示

硝酸バリウムと硫酸ナトリウムはそれぞれ次のように電離します。
・硝酸バリウム:Ba(NO₃)₂ → Ba²⁺ + 2NO₃⁻
・硫酸ナトリウム:Na₂SO₄ → 2Na⁺ + SO₄²⁻

硫酸バリウムBaSO₄が生成したことから、イオン反応式は次のようになります。

Ba²⁺ + SO₄²⁻ + 2Na⁺2NO₃⁻ → BaSO₄ + 2Na⁺2NO₃⁻
Ba²⁺ + SO₄²⁻ → BaSO₄

化学反応式が表す量的関係

化学反応式と物質量の関係

化学反応は原子の組み換えによる物質の変化であり、反応の前後で原子の種類と数は変わらないことを学びました。

先ほどは、鉄原子2個・酸素分子1個・酸化鉄2個で扱っていましたが、この原子の数を物質量に置き換えてみても成り立ちます。(1個→1molに置き換える ※1個≠1mol)

つまり「鉄原子1個と酸素原子1個で、酸化鉄が1個できる」→「鉄原子1molと酸素原子1molで、酸化鉄が1molができる」と言うことができます。

つまり、化学反応式の係数比は、それぞれの物質の物質量比と同じになります。
以下は、鉄を2molとしたときのものです。


化学反応式と質量・体積

化学反応の前後で、原子の種類・数は変わらないという原則から、化学反応の前後で質量の総和は変わらないと言えます。これが、「質量保存の法則」の所以になります。

さらにアボガドロの法則から、同温・同圧の気体の物質量比=体積比になるので、気体の化学反応式の係数比は、それぞれの気体の体積比と同じになります
参考:物質量(アボガドロ定数・モル質量・モル体積など)


練習問題
化学反応式と物質量・質量・体積

エタンC₂H₆ 11.2Lを完全燃焼について、次の問に答えよ。
(原子量:H=1、C=12、O=16)

問1:生成する二酸化炭素の物質量は何molか。
問2:生成する水の質量は何gか。
問3:完全燃焼に必要な酸素の体積は標準状態で何Lか。


解答:タップで表示

エタンC₂H₆は、次のように完全燃焼します。
C₂H₆ + 7O₂ → 4CO₂ + 6H₂O

問1
上式から、エタンと二酸化炭素の物質量比は1:4と分かります。
ここで、エタンの物質量は\(\frac{11.2L}{22.4L/mol}\) = 0.5mol
したがって、二酸化炭素の物質量は

0.5mol × 4 = 2mol

問2
問1と同様に考えると、水の物質量は0.5×6=3molとなります。
水のモル質量は18g/molだから、水の質量は

18g/mol × 3mol = 54g

問3:
化学反応式の係数比と気体の体積比は等しく、エタンと酸素の係数比は1:7だから、

11.2L × 7 = 78.4L

過不足のある反応

亜鉛に希塩酸を加えると、水素が発生する。亜鉛13gを濃度0.1mol/Lの希塩酸1Lに加えるとき、次の問に答えよ。
(原子量:Zn=65)

問1:発生した水素は標準状態で何Lか。
問2:反応せず残る物質は何か。また、その質量は何gか。

解答:タップで表示

亜鉛と希塩酸の反応は、次のようになります。
Zn + 2HCl = ZnCl₂ + H₂

問1:
亜鉛の物質量=\(\frac{13g}{65g/mol}\)=0.2mol
希塩酸の物質量=0.1mol/L×1L=0.1mol

上の反応式から、亜鉛と希塩酸は1:2で反応する事がわかります。
亜鉛をすべて反応させるためには、希塩酸が0.2mol×2=0.4mol必要です。
しかし、この問題の場合希塩酸が足りないため希塩酸0.1mol分の亜鉛だけ反応し、水素も生成されます。

ここで、希塩酸と水素は2:1だから

0.1mol × \(\frac{1}{2}\) × 22.4L/mol = 1.12L

問2:
問1から、反応せずに残る物質は亜鉛になります。

反応した亜鉛は、0.1mol×\(\frac{1}{2}\) =0.05mol
以上より、反応せず残った亜鉛の質量は、

(0.2mol ー 0.05mol) × 65g/mol = 9.75g


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