酸・塩基(アレニウスの定義・ブレンステッド・ローリーの定義・強弱・価数など)

この記事で学ぶこと
  • アレニウスの定義
  • ブレンステッド・ローリーの定義
  • 酸・塩基の価数と強弱
  • オキソニウムイオンH₃O⁺について(+α)
  • 共役酸・共役塩基(+α)

酸と塩基

酸とその性質

塩酸HClや硫酸H₂SO₄、酢酸CH₃COOHなどはと呼ばれ、酸性という性質を示します。
酸性の特徴は主に次の4つです。

  1. 酸味を持つ
  2. 青色リトマス紙を赤色にする
  3. 亜鉛やマグネシウムなどの金属と反応して水素H₂を発生させる
  4. 塩基と反応して打ち消す

塩基とその性質

水酸化ナトリウムNaOHや水酸化カルシウムCa(OH)₂、アンモニア水などは塩基と呼ばれ、塩基性という性質を示します。
塩基性の特徴は主に次の4つです。

  1. 苦みがある
  2. 手につけるとぬるぬるする
  3. 赤色リトマス紙を青色にする
  4. 酸と反応して打ち消す

(酸を中和する物質の総称が塩基であり、アルカリとは水に溶けやすい塩基のこと。高校化学ではアルカリではなく塩基を使うので慣れておこう。)


酸・塩基の定義①

アレニウスの定義

中学の理科で、酸とは水素イオンH⁺を生じる物質、アルカリ(塩基)とは水酸化物イオンOH⁻を生じる物質と習いました。高校化学では、この定義をアレニウスの定義と呼びます。

キーワード

アレニウスの定義

  • とは、水溶液中で水素イオンH⁺を生じる物質のこと
  • 塩基とは、水溶液中で水酸化物イオンOH⁻を生じる物質のこと

アレニウスの定義の限界

アレニウスの定義にはいくつかの欠点があり、説明できない事象があります。
例えば、下の3つが挙げられます。

  • 水以外の溶液中では、酸と塩基の区別がつかない
  • 水にほとんど溶けないCu(OH)₂などが塩基であることを説明できない
  • OH(ヒドロキシ基)を持たないアンモニアなどが塩基性を示すことを説明できない

また、酸・塩基の反応は溶液中に限って起こるわけではありません。
代表的な例が、塩化水素(気体)とアンモニア(気体)で塩化アンモニウムが生じる白煙反応です。

HCl + NH₃ → NH₄Cl

空気中で起こる酸(塩化水素)と塩基(アンモニア)の反応は、”水溶液中に限られるアレニウスの定義”では説明がつかない現象です。


酸・塩基の定義②

ブレンステッド・ローリーの定義

そこで、上記の現象も説明ができる定義が後に提案されました。ブレンステッド・ローリーの定義です

塩化水素とアンモニアの反応も、この定義を使えば酸と塩基の区別がつきます。

HCl + NH₃ → NH₄Cl

この反応は、塩化水素の水素イオンがアンモニアに配位結合することで起こるものです。
つまり、水素イオンを与える塩化水素が酸受け取ったアンモニアが塩基です。

参考:分子と共有結合(電子対・構造式・電子式・配位結合など)


練習問題 酸と塩基の分類

問:以下の化学反応式中にある下線が引かれている物質は、ブレンステッド・ローリーの定義によると酸と塩基のどちらに分類されるか。

  1. H₂SO₄ + 2H₂O → 2H₃O⁺SO₄²⁻
  2. CH₃COO⁻H₂O → CH₃COOH + OH⁻
  3. Fe₂O₃ + 6H⁺ → 2Fe³⁺ + 3H₂O
解答:タップで表示
  1. 下線のH₂Oは、水素イオンを受け取ってオキソニウムイオンH₃O⁺になっている。したがってに分類される。
  2. 下線のH₂Oは、水素イオンを与えて水酸化物イオンOH⁻になっている。したがって塩基に分類される。
  3. 下線のFe₂O₃は、Fe₂O₃中の酸素原子Oが水素イオンを受け取ってFe³⁺とH₂Oが生成している。したがって塩基に分類される。

酸・塩基の価数

酸1分子が出す水素イオンの数を酸の価数
塩基1分子が出す水酸化物イオン、または受け取れる水素イオンの数を塩基の価数といいます。

価数によって、酸・塩基は次のように分類されます。

※酸・塩基の価数と酸・塩基の強さには関係がありません。


酸・塩基の強弱

電離度

電解質が水溶液中で電離する割合(電離のしやすさ)を0~1の数字で表した値電離度といいます。(記号はαをよく用います。)

電離度α=\(\frac{電離した電解質の物質量}{溶解した電解質の物質量}\)

例えば、電離度α=0の物質は全く電離をしませんし、電離度α=1の物質は水に溶けるとすべて電離します。

電離度を例題を使って求めてみましょう。

例題

問:0.1molの酢酸を水に溶かすと、水素イオンが2.0×10⁻³mol生じた。この酢酸の電離度αを求めよ。

解答:タップで表示

電離度は”溶けた物質に対してどのくらい電離したイオンが存在するか”を表す割合です。
そのため、この問題の場合は\(\frac{電離した酢酸の物質量}{溶けた酢酸の物質量}\)となります。

酢酸は1価の酸なので、電離した酢酸の物質量と生じた水素イオンの物質量は同じです。
以上より電離度αは、

α=\(\frac{2.0×10⁻³mol}{0.1mol}\)=0.02


酸・塩基の強弱

酸・塩基の強さは、電離度の大小で決まります。

  • 酸:電離度が大きいほど水素イオンを沢山放出するため、酸性が強い
  • 塩基:電離度が大きいほど水酸化物イオンを沢山放出&水素イオンをたくさん受け取るため、塩基性が強い

一般に、電離度が1に近い酸・塩基を強酸・強塩基といい、
電離度が小さい(0に近い)酸・塩基を弱酸・弱塩基と言います。

下表は、高校化学で出やすい強酸・弱酸・強塩基・弱塩基です。名称と化学式をセットで覚えておきましょう。


オキソニウムイオンH₃O⁺について

水素イオンH⁺は水溶液中で単独には存在せず、水に配位結合してオキソニウムイオンH₃O⁺の状態で存在します。

H⁺ + H₂O → H₃O⁺

これは、酸の電離に関係します。
例えば、水中におけるHClの電離は正式には次のような反応式で表します。

HCl + H₂O → H₃O⁺ + Cl⁻

しかしH₃O⁺で書くと式が複雑になるため、基本的にはH⁺で書かれます。


共役酸・共役塩基

アンモニアNH₃の電離について考えます。

NH₃H₂ONH₄⁺OH⁻

ブレンステッド・ローリーの定義から、
水とアンモニウムイオンアンモニアと水酸化物イオン塩基に分類されます。

このとき、「酸がH⁺を与えたあとに出来た塩基のことを共役塩基」「塩基がH⁺を受け取ったあとに出来た酸のことを共役酸」といいます。

この反応の場合、「水の共役塩基は水酸化物イオン」「アンモニアの共役酸はアンモニウムイオン」です。

(試験で問われることは稀なので、覚える必要性は低いです。)


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