酸化と還元(酸素・水素・電子・酸化数・自己酸化還元反応など)

この記事で学ぶこと
  • 酸化還元と酸素・水素・電子
  • 酸化数
  • 自己酸化還元反応(+α)
  • Fe₃O₄中のFeの酸化数について(+α)

酸化・還元の定義

酸化・還元と酸素

中学理科では、酸化還元を次のように勉強しました。

酸化:酸素原子O受け取る変化。変化した物質は酸化されたという。
還元:酸素原子O失う変化。変化した物質は還元されたという。

復習もかねて、いくつか例を見ていきましょう。
下の反応は、銅が酸化して酸化銅に変化する反応です。


還元の例として、酸化銅を水素で銅に変化させる反応を見てみましょう。
このとき、水素は酸化して水に変化しています。

この化学反応のように、酸化と還元は必ず同時におこり、それぞれの反応が単独で起こる事はありません。
このような反応を酸化還元反応といいます。


酸化・還元と水素

ここから、「酸化と還元は同時に起こる」(以降原則と呼びます。)という原則に基づいて様々な反応を見ていきます。
次の反応は、二酸化硫黄と硫化水素との反応です。

SO₂ + 2H₂S → 3S + 2H₂O

反応を見る限り、SO₂は酸素原子Oを失ってSになっているので還元されています。
一方、H₂Sは水素原子を失ってSになっています。原則から、H₂Sは酸化しているはずです。

このことから、酸化・還元と水素原子Hの関係を次のように説明することができます。

酸化:水素原子H失う変化。
還元:水素原子H受け取る変化。


酸化・還元と電子

ここで、最初の例に出した「銅の酸化」をもう一度見てみましょう。

2Cu + O₂ → 2CuO

Cuは酸素原子Oを受け取って酸化しているため、原則から酸素O₂は還元していることになります。
しかし、O₂は水素原子を受け取っていませんし、O₂が酸素原子Oを失うというのも違和感があります。

ここで電子(e ⁻)の動きについて考えてみます。
CuとO₂はそれぞれ次のような反応を経て、酸化還元反応が起こっています。

①2Cu → 2Cu²⁺ + 4e⁻
②O₂ + 4e⁻ → 2O²⁻
   (①+②で、2Cu + O₂ → 2CuOに戻ります。)

このことから、「O₂は電子を受け取るため還元している」ということができます。
逆に「Cuは電子を失うため酸化している」ということができます。

長々と説明しましたが、電子の授受が酸化還元の正体です。

キーワード

酸化:電子を失う変化。
還元:電子を受け取る変化。

酸素原子O・水素原子Hの授受における酸化還元も、電子によって説明することができます。

酸素原子O→電気陰性度が大きい→電子を奪う→酸化還元反応が起こる
水素原子H→電気陰性度が比較的小さい→電子を与える→酸化還元反応が起こる


酸化・還元と酸化数

酸化数とその書き方

酸化還元の正体は、電子の動きであると勉強しました。
しかし、反応の中には電子の動きが分かりづらいものがあります。例えば次の反応です。

2CO + O₂ → 2CO₂

特にCOは、どのようにして電子のやりとりを行っているかが分かりづらいと思います。


そこで電子の増減をわかりやすくする、酸化還元反応に共通して使える概念である酸化数という数値が作られた。

キーワード

酸化数:原子一個あたりの酸化の程度を表した数値、物質が持つ電子の数が基準よりも多いか少ないかが分かる。

酸化数は、電子の数に着目しているため必ず整数となり、0以外には符号を付けます。
例えば、電子e⁻を1個失う(酸化)と酸化数+1、電子e⁻を2個受け取る(還元)と酸化数-2となります。


酸化数のルール

酸化数の付け方には5つのルールがあります。
それぞれ見ていきましょう。

単体中の原子の酸化数を0とする。
単原子イオンの酸化数とイオンの電荷が等しい。
化合物中の水素原子Hを酸化数+1、酸素原子Oを-2とする。
電荷を持たない化合物は、構成原子の酸化数の総和を0とする。
多原子イオンでは、構成原子の酸化数の総和とイオンの電荷が等しい。

酸化数の変化

酸化還元反応で酸化数を調べてみると、反応の前後で変化している事がわかります。
具体的に、酸化銅CuOと炭素Cの酸化還元反応を見てみましょう。

2CuO + C → 2Cu + CO₂

この反応では、CuとCの酸化数がそれぞれ次のように変化しています。

酸化数は電子のやりとりを表しているため、酸化数の増加量と減少量は必ず等しくなります。


+α

自己酸化還元反応

塩素Cl₂と水H₂Oでは、次のような反応が起こります。

Cl₂ + H₂O → HClO + HCl

反応中の塩素原子Clの酸化数を調べてみます。

一方のClは酸化され、もう一方のClは還元されています。
このように、同種の物質で酸化・還元のどちらも起こる反応を自己酸化還元反応といいます。


Fe₃O₄について

四酸化三鉄Fe₃O₄という物質は、鉄が酸化されて生成する酸化物です。
Fe₃O₄中の鉄原子Feの酸化数を求めてみましょう。

Feの酸化数をaとすると、ルール4から酸化数の合計は0になるので

3 × (a) + 4 × (-2) = 0
a = \(\frac{8}{3}\)

Feの酸化数は計算上\(\frac{8}{3}\)になりますが、酸化数は整数になるのでこれは間違いです。
実は、Fe₃O₄は酸化数3のFeが2つ、酸化数2のFeが1つで構成されています。
そのため、Fe₃O₄は酸化二鉄(Ⅲ)鉄(Ⅱ)とも呼ばれます。


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